学校教育のスポーツ指導者が抱えるジレンマとセルフマネジメント

※今回もWebとは関係のない話です。
僕は小学校から高校まで陸上競技(長距離)をやっていまして、トラック競技や駅伝を観るのは今でも大好きです。
高校生の頃には一時期スポーツ指導者の道を志した時期もあったくらいで、今でもまだ少し憧れがあります。この熱意を生かして(笑)、今回は陸上競技のようにテクニックよりフィジカルが重視されるスポーツの指導者が抱えるジレンマについて書いてみたいと思います。
近年の陸上界では、日本のトップ選手と世界のトップ選手の力の差は年々大きくなっています。これは男女の短距離・長距離すべての種目においてに言えることです。孤軍奮闘しているのは女子短距離の福島千里選手ぐらいでしょうか。
ただし、これはシニア選手の状況であり、逆にユース・ジュニア世代に関しては、同世代が集う世界大会で多くの日本人選手がメダルを獲得するなど、近年世界との比較で見た競技レベルは確実に向上しています。
これは一見喜ばしいことのように思えますが、この時期に活躍したほとんどの選手がシニアでは際立った活躍ができていないのが実情です。ここ数年でこのような状況がより顕著になり、競技力の早熟化や燃え尽き症候群のようなものが問題視されるようになってきました。燃え尽き症候群は箱根駅伝でもよく出てくるキーワードですね。
若いうちにオーバートレーニングを積んだ結果、フィジカルは若いうちにほぼ完成し、精神的にも疲れ果ててしまう。シニアになってからは競技成績は下がる一方で、最終的にはスポーツを楽しむ心までも失われてしまう。こういった状況が若きトップ選手たちに起こっています。
まだ根性論が根強く残っている日本は、そもそも他国に比べ相対的にトレーニング過多になりやすい環境ではあります。そういった環境も変えていかなければいけないと思いますが、それより問題視すべきなのは、指導者たちを取り巻く環境だと考えています。
その手腕に期待され、ある高校の陸上部の監督に就任した指導者がいたとします。その指導者が選手の将来性を考えたトレーニングを実践したおかげで、見事にある選手の才能が社会人になって開花しました。この時、果たして高校時代の指導者にスポットが当たるでしょうか?
残念ながら、そうなることはほとんどないでしょう。ちょっと表現がよくないですが、手柄はその時に指導していた指導者のものになってしまいます。そうなると、指導者は自分が教えているうちに結果を出しにかかります。強豪校になればなるほど指導者は競技部を強くするというミッションを背負っているので、よりこの傾向は強いはずです。
こういった指導のジレンマを防ぐための1つの方法は、選手を1人の指導者が長期指導することです。例えば中高一貫校の監督であれば、指導する生徒が中学生の時に無理に結果を追い求める必要はありません。それ以外でも、大学生になっても高校時代の監督に継続して指導を受ける選手がいたり、最近では指導していた生徒を追っかけて監督自身がチームを移ってしてしまう例まで出てきています。
ただし、長期指導が効果的なのは選手と監督の相性が良ければの話であって、そうでない場合は逆に選手の足枷になってしまう可能性があります。また、長い競技人生で1人の指導者の偏った考え方しか吸収できないというデメリットもあります。
こう書いてしまうと、指導者にとっても選手にとっても八方塞がりの状況のように思えますが、僕はこれを打破する現実解が1つだけあると思っています。それは、選手自身が主体的にトレーニングを組み立て、実践する力を持つことです。
世界大会の400mハードルで2度もメダルを獲得した為末選手や、昨年の世界選手権のハンマー投げで史上最年長で金メダルに輝いた室伏選手は、特にこの「セルフマネジメント能力」が高い選手です。これからの時代は、こういった選手でないと継続的な成長を維持することは難しいと思います。彼らは、指導を受けた際もその内容を自らで取捨選択したり、自分のスタイルに合わせて吸収することができます。
それでは指導者の出番はないのでは?と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。セルフマネジメントが重要な時代だからこそ、選手のセルフマネジメント能力を高める指導が必要とされるからです。
ただし、自身の経験に基づいてこういったことを語れる指導者は、現状日本にはほんのわずかしかいないと思います。成功していなければ言葉も説得力を持たないことを考えると、もしかすると為末選手や室伏選手レベルでないと難しいかもしれません。
しかし、このままでは日本の陸上界に光が見えないのも事実です。いち陸上ファンとして、これからの指導者には、ぜひ日本の若き才能が自立するための教育を期待したいと思います。




